摺り込みは岐阜提灯の最も特徴的な工程のひとつです。当初、描画の風合いを最大限生かすための大量生産方法として導入されましたが、長い年月を経て、今では伝統的技法のひとつとして重要な地位を占めています。

1、ドウサ引き 2、版摺り 3、摺り込み


 摺り込み作業
まず、絵師や図案家によって図立てされた原画をもとに、線画きした版下が作られます。これを版木に貼って彫り、輪郭部分の版が出来上がります。その版に馬毛のハンズリバケで色をのせ、バレンで摺って線摺りをつくり、原画を参考にして伊勢型紙で型を彫ります。この型紙の彫りは摺込師がおこなうもので、出来上がると漆(現在は速乾ニス)を塗って補強します。型紙の数は製品のランクによって変わり、高級品ほど数が多くなります。現在最も多いものでは、全体で100手を数えます。彫り上がった型をもとに試し摺りがおこなわれ、問屋の承認を受けてから注文数を摺り始めます。

また、使用する紙には、摺り込みの前に羊毛のヒラバケでドウサを引きます。ドウサはニカワとミョウバンに水を加え煮込んだもので、その分量は長年の勘により調整されます。ドウサを引くことによって紙にコシと艶が出るとともに、摺り込みによる顔料のにじみを防止します。典具帖の場合、紙が薄いために破れやすく、乾燥用の竿にかける途中で紙がくっつきやすく、そのため熟練を要するのです。白地の場合はそのまま摺り込みとなりますが、地色を付ける場合は、ドウサに染料を入れてハケで塗ります。天地引きが多く、天(上部)は空色、地(下部)は緑色が多くあります。

現在は天地全面に塗ることが多いですが、昭和30年代までは、カスミと称し、天地の間に無着色の部分を残したものがほとんどでした。また、輸出用や宣伝用には黄色、赤色などの原色を使った地色が多い。なお、機械漉きの紙は厚く丈夫で紙質も均一であるため、ドウサ引きを省略して地色引きのみおこなう場合もあります。しかし、手漉きでは紙が薄くムラがあるため一旦ドウサ引きをしないと地色に濃淡が出ます。

紙は100枚を一束とし、1手ごとに摺り込んでいきます。この時、羊毛を使ったボタンバケが使われ、摺り込む面積によって大きさを変えます。着色には顔料をニカワと水でとき、見本と同じ色になるように調合して乳鉢ですります。あらかじめ版摺りされた紙に、指定の場所へ型紙をあてて色をのせます。提灯は灯をともしてなお美しくなければならないので、ベタ塗りはいけません。立体感をもって摺り込むことが重要です。そのため、乳鉢にとかれた顔料はツケサシ(現在では歯ブラシ)によって掻き混ぜながら小皿にとり分け、そこでハケに顔料をつけます。微妙な濃淡も顔料のつけ方と、手首をきかせ「ハケの重さだけで摺り込む」というハケさばき、そして同じ花の部分でも何枚かに分けた型による色の変化によって表現されていきます。

その他摺り込みの技法として、ハケにつけた顔料の量とハケさばきを調整することで、1手でグラデーションをかけて摺り込むボカシと呼ばれる方法があります。また、ハケにツケサシで2色のせ、1手で2色同時に摺り込む場合もあります。これは主に手間をかけない安価な製品の場合に使われます。そして数をこなす必要から、必ず綴じてある天から地へ、左から右への方向を基本として摺り込んでいき、仕上がると同時に紙をめくります。
岐阜提灯(地紙部門)摺込
伝統工芸士/稲見繁武
岐阜提灯(地紙部門)摺込
伝統工芸士/古川能利子

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